バスルームのつくりかた
〈集合住宅でのビスポークバスルーム〉
集合住宅のバスルームには、短時間でサッと作れる今の時代に見合った、安価でメーカー保証付きのカタログ商材を使うことがほとんど。つまりユニットバス。ぼくはこれを悪いとは思わない。手放してしまったがぼくの住まいにもそれを選んだ。パナソニックに呼称統一する直前の松下電工・深澤直人さんデザインのもので、どこかつくば研究学園都市的であり、バウハウス的でもあった。あのコンセプトのまま20年くらい突っ走って熟成させてほしかった。昨今の震災以降というのか、まるですべてが変わってからの各社のラインナップには名作と呼びたくなるものがないと思う。お客様は満足して買っているばかりではなく、選択肢に困り、消去法で選ばざるを得ない状況だと皆わかっているはず。中古のマンションを購入された方がユニットのみを新規に入れ替えることは当たり前のようにできるので、トイレや衛生機器を交換するのと同じようにユニットバスを消耗品としてみるようになったからには開発側にできることはもっとあるはず。余談ですが、つくばの独創的な公務員住宅群もすこしずつ解体されていっています。
さて、ビスポークバスルームとは。計画は自由自在。浴室の広さ・形もお好みに沿ったものをお作りする方法で、ひとつひとつの工程を大切に積み上げてゆく、現在でも戸建ての浴室などには採用されているオーダーメイド・在来工法。いわば昔ながらのやり方をアップデートしたもの。水栓金物、照明器具などはお好みのものを選べます。
お客様ご夫妻はぼくらと直接繋がりのある分野にてご活躍中で、実は大変お世話になっていることをぼくが知らないだけなのは次第に理解していきます。今回ぼくらをご紹介頂いた経緯に恵まれていたこともあって、幸運にも早い段階でご信頼を頂くことができました。その意味では心強かったのですが、クリアしなくてはならない施工条件・命題が極めて高難度ゆえ、眉間には常にシワがありました。一方で、普段から美を見いだし判断することの多い職業のご夫妻は、さまざまなアプライアンスに関しても迷うことなく、その吟味は理想的であり極めてスムースに運びました。ここは今回のお仕事で非常に刺激を頂いた部分であったと強調しておきます。
ドイツ製の浴槽を白い壁面タイルで包みこみ、当然追焚きも可能(海外製バスタブは生活習慣の違いから浅いものが多く付加機能にも違いがあります)。床のタイルは滑りにくく、シャワーは吐水量豊かなオーバーヘッドタイプで全身が暖まります。実績と信頼の日本製浴室乾燥機を装備し、雨の多い時期のみならず、浴室内の湿気・カビ対策にも配慮しました。入口サッシュはステンレスとガラスを採用することにより、透明感のある明るさと広々とした浮遊感が得られました。すべての下地は防水防錆加工を施してあります。脱衣所のカーテンレールでさえ、アメリカ製品をひとひねり追加工することで、味わいがありながらも使い勝手の良いものにすることができたと思います。
また、洗面室にも挑戦は連続していきます。紅松製のキャビネットは弊社謹製。無垢の扉は滅多に塗りつぶさないのですが今回ばかりは白く吹き付け、イタリア北東部産出の本磨大理石をトップに。洗面ボウルはドイツ製品、水栓金物は奥様のチョイス。壁面は水はね対策と美的効果からタイル。照明器具は浴室・洗面室ともドイツ製のものが堅固なつくりでした。
誂えのバスルームを手に入れるための必要項目は、まず工事を請負える経験豊かな人材確保。これは弊社が担当させて頂ければ幸甚です。好きなものを集めてくるだけではなく、海外製品は取り付け可能なものかどうかを吟味して、そのままではどうにもならないときには取り付け加工の細工を慎重に施すこと。ここは弊社がしっかりとお打ち合わせさせて頂きます。工程をひとつずつ幾重にも磨き上げてゆきながら工事に臨むのは、単純化された量産品を組み立てるのとは何もかもが異なる故。ぼくらは全く違うものを作りにきたのです。
FEEL THE DIFFERENCE.
所在地 |
東京都世田谷区 |
工事区分 |
在来工法浴室造作工事、洗面所造作工事 |
工事種別 |
設計、解体工事、LGS工事、サッシュ工事、給排水衛生設備工事、防水工事、左官ブロック工事、タイル工事、電気工事、塗装工事、ガラス工事、金物工事、家具工事 |
床面積 |
6.13㎡(サニタリーのみ) |
主要仕上材 |
[浴室]壁:モルタル下地 タイル仕上げ、床:シンダーコン下地 タイル仕上げ、天井:軽量鉄骨下地 浴室仕上げ材、サッシュ:SUSサッシュ+ウレタン塗装仕上げ[洗面所]壁:モルタル下地 タイル仕上げ[洗面台]大理石+木製キャビネット+ウレタン塗装仕上げ |